夜明けのコンツェルト | ナノ


 

大学に通うために、実家から出て一人暮らしを始めて早一年。
ようやく一人暮らしの寂しさ、面倒くささ、そして自由に慣れてきた矢先に、こういうことになった自分の身の上を心中で嘆く。
ああ神よ、これは試練なのでしょうか。ならもう少しまともな試練を課してくださいちくしょう。

しかしいくら嘆いても現状は全く持って変化しないわけで。
ばら色の一人暮らしから一転し、居候を迎えることとなったことを諦めて認識した。


「ちょっと出かけてきます……」


正直、いきなりすぎて頭が回らない。
しかしこのまま二人きりでこの部屋にいるのは少々厳しいものがある。

名前は、ふらふらとした動作でかばんを持って立ち上がった。

彼女はとりあえず、政宗の服を調達してこようと考えていた。何せ彼は今甲冑を着ている。それも目が覚めるような青色の、だ。これでそこらへんの道を闊歩されては、警察官がこぞって話しかけてくるに違いない。

幸か不幸か、彼は戦国時代の人間らしからぬ髪型と顔立ちをしている。普通の服装をすれば現代人に見えるはずである。

出かける、と言った彼女の言葉に、政宗が反応する。


「何処に行く」

「ちょっと、買い物に……」

「買い物? 何をだ」

「一応、貴方の服なんかを……」


そこまで言うと、彼の鋭い目に好奇心がちらちらと見え隠れした。
名前は何だか嫌な予感がした。


「それ、俺も連れてってくれ」


もしや、と思い覚悟していたら予想通りの言葉を言われてしまった。


「その買い物とやらに興味がある」

「えー、えー……? 興味ですか……」


興味、と言われてもただ服を買いに行くだけなのだが……と名前は返事に困ったが、もはや付いてくる気満々の藤吉郎を見てがっくりと肩を落とした。


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