夜明けのコンツェルト | ナノ


 

ひどく、目覚めの悪い朝だった。


例えるなら、まるで洗濯機の中に放り込まれてぐるぐるとかき混ぜられたような感覚。倦怠感が全身に覆いかぶさり、何だか胃がむかむかする。低血圧気味ですこぶる朝が弱い名前の朝は大体このようなものだが、今日は特別、気分が悪い。

昨日、何か変なものでも食べたかなぁと考えながら、名前はベッドから這い出る。とりあえず水でも飲もうとふらつきながらもキッチンに立ち、冷蔵庫の中からミネラルウォーターを取り出した。大学生の清貧な生活だが、水だけには少しばかりこだわりがある。

コップに注いで、一口飲む。喉を通っていく冷たさで胃の不快感が少しだけ取り除かれたような気がした。


「あー……今日は2限からか」


時計を見ながら呟いた。現在の時刻は九時半を少し回ったところ。2限目の開始時間は10時30分。大学まで自転車で10分程度だから、まだまだ時間には余裕がある。

コップの中の水を飲み干すと、シンクの流しに置いた。流し台の中にはかなりの数のコップが置かれていた。そろそろ洗わなきゃな、と思う反面、水を飲んだコップしか置いていないのだから臭うこともあるまい、と名前は流し台を見ないことにした。

しかし洗濯物はどうにかしてしまう必要がある。このままでは溜まっていく一方だ。一人暮らしとはいえ、自堕落に生活するわけにはいかない。彼女は気だるげな動作で、洗濯物が大量に入った籐の籠を持ち上げた。

洗濯機はベランダに置いてある。さっさと洗って、時間があれば今のうちに干してしまおう。
そう考えながらベランダに出ると、そこで彼女はとんでもないものを見たのだった。


「……え?」


ベランダに男が、倒れている。



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