空を見上げる。
先に雲間から割って出た光、数秒後に耳に低く響くような音が届いた。
遠雷。
「雷だね」
「そうだな」
「雨降ってないのにねー」
「そうだな」
「洗濯物いれとこっかな」
「そうだな」
「元親手伝って」
「そうだな」
「お前大丈夫か」
「そうだな」
「おいぃぃぃ! ちゃんと返事しろなんか怖い!」
「す、すまねぇ」
隣りに座る男は腕を組んだままずっと俯いている。
どうしたのだろうか。
「どうした。貝類食ったんか」
「昨日食った。けど俺は猫じゃねぇ」
「体調悪いとか?」
「……まぁ、そんなとこだ」
その時、また空が光った。
8秒くらいしてから低い音が鼓膜を震わせる。
そして隣りの男も震わせた。
「……」
「……」
「……元親や」
「なんだ。俺は全くもって平気だともあんなもん政宗の奴に比べたら屁でもねぇよちくしょう馬鹿野郎」
「落ち着けよ」
「俺はいつでも冷静沈着だ」
「……光ってから音が聞こえるまでの秒数で雷からの距離が分かるんだよ」
「……今さっきのだったら?」
「音は秒速340メートルだから……ここから約3キロのとこに落ちたというわけ」
「そうか」
素っ気無いだが見違えるほど穏やかな表情をしている。
可愛いやつめ。
雷の季節2008/08/05