「何、コレ」
起きたら、小指に赤糸が絡んであった。
しかもすごくキツく結んである。指先が軽く鬱血していた。
「誰のいたずらだこりゃ」
誰、とか言いながら、思い浮かぶ人が一人だけいるのだが。
奇しくもその時、襖がスパンと開いた。
「Good morning, my sweetheart!」
「……ぐっもーにん、筆頭」
襖を開いて現われたのは、上司の伊達政宗公だ。奥州筆頭とか言われているが、実際は年中常春男だ。
今日の筆頭は、なんだか無駄にキラキラした笑顔を浮かべている。何か良いことでもあったのか。
ふと小指を見ると、そこには私と同じように赤い糸が結び付けてあった。しかも指先が尋常じゃないほど変色している。大丈夫だろうか。
筆頭は笑顔で私に近づいてきて、寝癖のついた頭を了承も得ず撫ではじめた。
「ひでぇ顔だな。寝起きか?」
「そうです。だから退出願います」
「所がそうは行かねぇな。――お前、小指についてるもん、知ってるか?」
布団の傍らまで来て座り込み、わくわくと楽しそうに話しかけてくる政宗を、彼女は半眼でじとーっと睨む。
「筆頭の仕業ですか、このいたずらは」
「trickじゃねぇよ馬鹿」
「うつけは筆頭の方です。ほら、きつく締めすぎて赤くなってる」
「Oh,sorry。悪いことしたな」
「その割には反省の色が見えませんが」
「だってしてない」
「……切ります」
「What!? だめだだめだ! 切るな!」
「じゃあ解いてくださいよ」
「それもだめだ」
「鋏は何処かなー」
「わー! ちょっと待てー!」
運命を信じますか?
(ああ、俺との縁が……!)
(あんたは乙女か)
2008/02/28