短編(その他/過去) | ナノ


あの女がまたいなくなった。ベッドにも、ソファにも、トイレにもいなかった。今月でもう三回目だった。いい加減、慣れた。別に自分は何も悪いことは(自覚している限りでは)していないし、多分彼女も拗ねたくらいでは出ていきやしない。多分ああいう人種なんだ、あいつは。根のない草。風が吹けば何処ぞへ飛んでいく綿毛のように気が付いたらいなくなる。繋いでおく程溺れちゃいないから気が向いたら拾いに行く。それが日常だった。

今日は朝から天気が悪い。気紛れにつけた天気予報じゃ昼から雨らしい。
雨、と呟いて女の姿が浮かんだ。多分傘なんて上等なもん持っちゃいないだろう。びしょびしょになって帰ってくるのがオチだ。帰って、くるのなら。
少し考えて、冷蔵庫の中のコーヒーがあと数本で切れることを思い出した。あの銘柄は少し飽きたから、また新しい味を探しに出るのも悪くない。

傘を一本持って玄関を出た。
空は酷く曇っていた。


侵蝕する雨






2009-05-07




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