短編(その他/過去) | ナノ
優しくしないで。女は泣いた。何故泣くのか、男には到底理解できなかった。女とは、優しく扱われると喜ぶ生き物ではないのか。まるで硝子細工を扱うように髪を撫で、絹の布を触るように頬に指を滑らせる。いつもの自分からすれば、考えられないほどに気を使って、彼女に接している。しかし、女は泣く。ほろほろと、俺が優しくしてやる度、その黒い瞳から涙を溢れさせる。逆に、冷たく当たろうとしたことがある。すると今度は俺が苦しくなった。自分の言葉が自分自身にも突き刺さった。俺はどうしてしまったのだろう。自問自答の末導き出された答えは至極簡単だった。そう。惚れているのだった。そして男は気付いたのだ。女がひたすら涙を流し続ける理由を。ああ、こいつも俺に惚れている。だから、泣くのだ。優しくしないでと泣くのだ。こいつはもう、俺が今から齎す知らせをきっと知っている。

泣く女

(優しくしないで。優しくされたら、別れが辛くなるわ。知っているの、貴方がもうじき、私から離れていってしまうのを。もう二度と会えないことを)

(最期くらい、笑顔で見送ってほしかったのになぁ)


2011-03-08




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