女は嘆いた。この世界に。悲しみと喜びが偏った世界のシステムに。それを創造したもうた存在に。或る種の諦観と恨めいた声で、吠える。
「ああなんと神は無慈悲なのだろう!」
みたかい今のを。車に轢き殺された少女の脇で籤に当たった男が喜んでいるよ!
「ああなんとこの世は傾いているのだろう!」
軸が歪んでいるから、世界も歪んでいるのかね。
女は隣りを歩く少年に向かって泣いた。
「少年、少年は無慈悲だと、そうは思わないかい?」
白い少年は微笑んだ。
「貴女は神を信じているのですか?」
僕はね。少年は綺麗な微笑みを湛えたまま唾をはいた。
「存外、神様と悪魔は、変わらないと思うのです」
そうでしょう? と意を問う彼の笑みは酷く、美しかった。
だって二つとも奪い去るもの。
エリ・エリ・レマ・サバクタニ
神は何故わたくしを見捨てたか
2009:06:07