短編(その他/過去) | ナノ

優しさは嫌いだと唾を吐いた、温もりは要らないと破棄捨てた、笑顔なんて吐き気がすると嘘を、ついた。
素直になれない自分が愚かしい。何故、言えない。たかが二文字、されど二文字か。俺の中でこの熱い感情は行き場をなくして、ぐるぐる、ぐるぐる際限なく回り続けていてああ今にも倒れてしまいそう。胸が酷く苦しいんだ。お前の優しさに触れる度。お前の温もりを感じる度。お前の笑顔に照らされる度。まるで鋭い刃物が肋骨の間を通って心臓を何度も突き刺すように、酷く俺を苛むのだ。嘘を吐く度にお前が涙を流すのを俺は知っている。嘘と知らずにお前が頬を濡らし冷たくしてしまうのを俺は知っている。それでも明日になればまた、変わらぬ姿勢で傍らにいてくれるのも。そのことに慢心しているのだよ、俺は。謝りも出来ない子どものように持て余す感情に涙を流した。

嘘つきの目にも涙

(言える日は多分、来ないのだろう)







2009-04-20



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