君は遠い人 | ナノ


その後の出会いは、私を驚かせた。

「さあ名前! 私の友人を紹介するよ。こちらがアルベルト、そしてこちらがチカチローニだ!」

ハンジさんに連れられて来たのは、少し開けた場所だった。人もたくさんいて、賑やかだなぁと思っていたのもつかの間。そのすぐ後に「賑やか」なんて軽いものではないことがわかった。

「巨人、だ……」

大きな柱に括り付けられた巨人が二体、開けた場所で座っていたり横になっていた。
足や腕に無数の釘を打たれ、身動きができないようになっているのだ。

「こっちの大きい方がアルベルト。こっちの小さい方がチカチローニさ」
「は、はぁ……」

ハンジさんに巨人の目の前まで連れてこられる。二体の巨人が、私を見た。

「早速だけど、今から少し実験をさせてほしい。君が本当に巨人に襲われないのか、見せてほしいんだ」
「え、い、今ですか!?」
「さあ、早く早く!」
「あ、ちょっと!」

ハンジさんは素早く私の手を引いて、二体の巨人の前に連れ出した。周囲が騒然となる。

ハンジさんの部下のモブリットさんが、慌てて彼の肩を引いて止めに入った。

「ぶっ分隊長!? あんた何やってんですか! 死にますよ!?」
「モブリット、大丈夫だよー。ちょっと試してみたいことがあって」

ささっとモブリットさんの手を払いのけると、私を巨人の前に押し出した。
後ろから、「分隊長が殺人を……!?」というモブリットさんの悲壮な叫び声が聞こえた。まさにその通りだ。私が巨人に襲われる普通の人間であれば大変なことになっていただろう。

しかし、そうではないのだ。
私は顔をあげて、二体の巨人を見上げた。二体とも、私を見下ろしている。

けれども、それだけだ。
他の人に向かってするように大口を開けたり、力一杯動こうとはしない。
自然な状態で、私は巨人たちと見つめあった。

周囲のざわめきが、大きくなる。

「あの子、巨人に襲われないぞ……?」
「あ、そういや俺聞いたことがある! 巨人に襲われないっていう市民をエルヴィン団長が保護したって」
「それ本当かよ!?」

そんなざわめきをかき消すような大声が、すぐ側で爆発した。

「すっ……すごい!!! 一体これはどういうことなんだい!? 私なんか……ほら! こうやって近付いただけで食べられそうになるのに!! すごい!!」

まさに狂喜乱舞しているハンジさんのテンションに、ざわついていた周囲が一気に我に返ったのか落ち着きを取り戻した。言い方を変えるとドン引きした。


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