君は遠い人 | ナノ
「さて、今後についてだが」
エルヴィン団長は、気持ちを切り替えるように座り直した。
「君は、一般市民として保護することにする」
私の中では、「捕虜」や「実験体」ということになる覚悟をしていたので、エルヴィン団長のその申し入れに少しだけ驚いた。
「市民、ですか?」
「ああ。兵士は勝手に兵団を変えることは出来ないが、一般市民は違う。兵服は着てもらうことになるだろうが」
「はあ……」
兵服というと、今彼らが着ているものと同じものだろうか。
かっこいい、と思ったがよく考えるとコスプレ、なのだろうか。
もんもんと他のことを考えている私を放置し、話は進んで行く。
「そして、君の立ち位置は巨人調査員とする。調査員も本来は兵士の仕事だが、今は慢性的な人手不足で一般市民にも参加を募っている部署だ。そこに所属する……表向きは」
「……え?」
ほとんど最後だけ聞き取れたのだが、「表向き」ということは、裏側の本当は違うという意味だろうか。
私の困惑に気付いたエルヴィン団長は言葉を足していく。
「ああ、調査員といっても、君はどちらかというと『調査される』側だと思ってもらっていい。特異な体質だし、人類のために是非研究させてもらいたい」
「あ、はあ……」
どうやら実験体にはなるらしい。
痛いのは嫌だ。そしておそらく担当するのは巨人をこよなく愛しているあの人だろう。
あの熱烈な様を目にするのかと思うと、少々胃が重たくなる。
そして、実験体になるだけかと思ったら、そうではなかった。
「君は研究に協力してもらうのと同時に、壁外調査に参加してもらいたい」
「え、ええ!?」
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