君は遠い人 | ナノ




ここは壁外だ。どこに巨人がいてもおかしくない。森の木々の隙間から、15メートルはありそうな巨人が姿を現した。速度はゆっくりだが、確実に私たちの方へ向かってきている。

「目標は一体! 15メートル級の巨人です!」

彼らは即座に立体機動で木々にアンカーを打ち込んだ。
戦いが始まるのだ。

そして私は、彼らの馬と同様に、地上に残された。

「おいおい……他にも出てきたらどうすんですか」

そんなことを口にしながら、頭上を見上げる。
彼らの戦い方には無駄がなかった。何もいわずともペトラは即座に補助に入り、オルオたちも巨人の囮になっている。
そして、リヴァイ兵長はというと、空中を舞っていた。
その姿はもはや美しささえ感じさせた。
何回転もしながら、的確に巨人のうなじを狙う兵長の動きに魅了される。

そのせいで、気付かなかったのだ。
背後に、他の巨人が迫っていることに。

気付いたのは、ペトラの叫びにも近い声だった。

「へ、兵長! 新しい巨人が出現しました! 3メートル級一体と、10メートル級一体です!」

ずしん、とわずかな地響きが聞こえた気がした。
その地響きに惹かれて後ろを振り向くと、ほとんど目の間に、巨人が迫っていた。
薄ら笑いを張り付けたその顔が、手を伸ばせば届く距離にあった。

おそらく、私以外の人はここでこう思うだろう。
「ああ、あいつはもうだめだ、食われる」

先程の巨人たちとの出会いがなければ、私もそう思っていただろう。
けれど恐怖感はなかった。巨人は私をなぜか襲わない。
万が一ということもあるが、ここはそれを確認しなければ。
恐怖感よりも、自身への興味が勝った。

馬に乗ったままの私を、彼らは観察している。口を開けたり、手を伸ばしたりしない。ただ、見ている。私も彼らを見つめる。胸が、嫌な音を立てている。もしも先ほどのことが例外であるなら、ここで私は食べられてしまう。

それでも逃げ出さなかった。正直に言うと恐怖心で動けなかったのだが、それでも巨人たちをじっと見ていた。彼らがどんな動きをするのか。私は本当に、巨人に襲われないのか。

そしてその考えは合っていることが分かった。
彼らは私から視線を外した。そしてそのまま、私の後ろにいるリヴァイ班のメンバーへ足を向けた。

賭けに勝った。いや、勝ってしまったと言った方がいいのか。
これで証明されてしまった。

私はどうやら、巨人の捕食対象から外れているらしい。

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