君は遠い人 | ナノ
少し開けた場所に、何人かいた。
そしてその何人かも、とても見覚えのある顔ぶれだった。
リヴァイ兵長の真似をして気取っている、オルオ。
馬に寄りかかっているエルド。
しゃがみこんで自分の剣を見ているグンタ。
そして、こちらを鋭く見据えるリヴァイ兵長だ。
「ペトラ、遅かったな」
「すみません、怪我の確認をしていたもので」
リヴァイ班と合流して、ペトラは素早く馬を下りた。そのせいで、彼女の背に隠れていた私の姿が他の班員にはっきりと見えたようだ。
「……優雅に寝こけていたってのは、そいつか」
「はい。どこも怪我がなかったそうです」
「ほう……」
リヴァイ兵長が、いつもの三倍はきつい目つきで私をにらんでいる。
漫画でも怖かったのにこうして実際に見てみると、目を合わせられない。
何か、形容できない圧力を感じる。
「ペトラ、そいつ本当に怪我がないのか?」
「オルオ。本人にも確認したわ」
漫画の設定では、リヴァイ兵長の真似をしているらしいオルオは、気取った仕草で私に近づいてきた。
無遠慮に私を眺めると、ふっと鼻で笑う。
「ふん、巨人がうろちょろしてる森で寝こけるなんてどんな豪胆な奴かと思えば、子供か」
漫画の設定どおりの気取った仕草で前髪を払うオルオに若干のいら立ちを覚えたが、それは私だけでもなかったようだ。
「オルオ、その意味不明な仕草やめてくれる? 見ていて不快なんだけど」
「おいおいペトラ。可愛い顔してそんな毒吐いてると嫁の貰い手がなくなるぜ?」
「あんたに心配されるいわれはないし可愛いなんて言わないで気持ち悪い」
どうやらペトラさんがオルオにやたらと厳しいのも本当のようだ。
漫画の設定どおりだー、と感動していた私は、至近距離までリヴァイ兵長が近づいたのが分からなかった。
「おい」
「うわぁ! は、はい」
思わず声をあげてしまった。兵長の顔が怖いせいだ。
そのことに構わず、兵長は先を続ける。
「お前、本当に怪我してなかったのか?」
「え、はい」
「……生きているのが不思議なくらいの幸運だぞ」
「へ?」
「あそこに、巨人が何体いたと思っている」
「……」
私は察した。
怪しまれている。
リヴァイ兵長はさすがだ。ペトラさんはどうにか丸め込めたが、彼をごまかすのは相当難しそうだ。というか無理そうだ。
「え、えと……」
どうやってごまかそう、と言葉を選んでいると、その瞬間周囲の空気が変わった。
より正確に言えば、班員の顔つきが変わったのだ。
「巨人だ!」
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