君は遠い人 | ナノ


それからしばらくの間、エルヴィン団長と今後のことについて、さらに話を続けた。

今後住む場所、他の兵士への説明の仕方など、彼は契約事項をチェックするかのように綿密な質疑応答をする。

どうやら私の正体は、ここにいる二人にしか分からないようにするらしい。

正直、ホッとした。もしも様々な人に知られでもしたらと思うと恐ろしい。
内外には特異体質の市民を保護した、と報告するとのことだ。

それにしても、こんなに細かく、そして私の目の前で処遇を話すなんて、彼の性格もあるのだろうが、まるで本当に雇用されるようだ。

「給金は歩合制だが、衣食住は私が保証しよう」
「基本的に任務は毎日であるが、休日も存在する」
などなど。まるでバイトか何かの面接に来たかのようだ。

それら全てに私はだいたい、「あ、はい」と答えていた。内容の理解は出来ているが、「それは嫌です」というのはほとんど無駄だからだ。
先程の立体機動の件もそうだが、私に拒否権はないだろう。

拒否をすればこの世界で路頭に迷ってしまうことになる。
巨人に襲われないというのはありがたいが、お金もないし知り合いもいない状況でどうやってこの世界で生きて行けばいいのか、私には分からなかった。

さすがに「解剖して君を調べ上げる」とか言われたら逃げ出すが、そうでもないようだし、しばらくこの場所で厄介になろうと思う。

しばらくして、全ての説明が終わった。
そんなに悪い待遇ではない。およそ人間らしい暮らしを送らせてくれるらしい。


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