境征参加 | ナノ
幸村と政宗をそれぞれ風呂場へ押し込めた後、主の代わりに佐助が城内を案内した。
騎馬隊兵には大部屋を、そしてここにはいないが政宗、部下の小十郎と成実にはそれぞれ個室を用意した。
長い廊下に面した三つの部屋をそれぞれ回りながら、佐助は手際よく説明をしていく。
「お三方の部屋は別に決めてないから、好きなとこ三人で話し合ってちょうだいよ」
「ああ、わざわざすまん」
不在の主に代わり、申し訳なさそうに眉を顰めた小十郎が軽く頭を下げた。
成実もそれに倣い頭を下げてから、にっこりと笑みを浮かべる。
そして佐助はそのまま大広間の方へ向かおうとしたのだが、小十郎に呼び止められてしまった。
呼び止めた張本人は、気まずそうに頬の傷を掻いていた。
佐助はそれを見て小十郎の言わんとすることを察した。
「その……」
「あー。どうぞどうぞ、思う存分点検しちゃってください」
小十郎が言い終わる前に、苦笑した佐助は手をひらひらと振った。
そんな彼に二人はまた少し頭を下げて、宛がわれた部屋へと入っていった。
部屋に何か危険なものが仕掛けられていないか。政宗の身に危害が加わるようなものは置かれていないか。二人は竜の腹心の名にたがわない動きをしていた。
しばらく経った後、二人は部屋から出てきて、今度はちゃんと佐助に頭を下げた。
その光景にいたたまれなくなった彼は慌てて頭を上げさせた。
「もー、俺様なんかにそんなぺこぺこしないでよー」
「しかし」
「俺様だって旦那の立場ならやるよ? ていうか、断りもいれずにすると思うし」
「ううむ……」
「そんな渋い顔しなさんなって! お仕事なんでしょ?」
その言葉に小十郎は一瞬驚いたような顔をして、そして幾分か柔らかい笑顔でふっと笑った。
「ああ、そうだな」
佐助はそんな小十郎に肩を竦めたが、その顔もまた微笑んでいた。
「じゃ、そろそろ次いきましょっか」
「ああ、頼む」
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