境征参加 | ナノ



まつが去って、部屋に残った慶次は、頭をかきながらハハハと笑う。


「体の調子はどうだ?」

「ちょっと気持ち悪いけど、大丈夫」

「そうか。名前ってば、ずっと寝っ放しだからさ」

「あ、そういえば出発してから何日くらい経った?」


ずっと起きては寝ての繰り返しだったので、名前は日付の感覚がなくなっていた。

慶次は少し考え込むように顎に手を添えた。


「んー……ざっと二日目だな」

「二日……」


名前は目を覆った。そして大きな溜息を吐く。


「あれから二日も経ってんの……?」

「うん。……その間、俺は説教三昧だったけどな」


遠い目をする慶次を鼻で笑ってやる。


「当たり前でしょ、馬鹿慶次」

「ひっでぇな。結構辛いんだぜ?」

「日頃の行いの成果ですー。
 ……ほっぺたさ、まつさんに叩かれたの?」


腫れた頬が痛ましい。思わずそっと手を伸ばし触ると熱を持っていた。

慶次は苦笑しながら肩をすくめた。


「説教がひと段落した後、まつ姉ちゃんったら祝言挙げるとかどうのこうの言ってたから、慌てて本当のこと言ったら、思い切り、拳で」

「拳!? 豪快だねまつさんって……」


怖々と呟いた名前だったが、小さく吹き出した。


「しっかし、慶次の話の通りだったよ、まつさん」

「だろー? 利も多分、俺が話したとおりだと思うぜ」

「マジで?」


笑いを含みながら会話していると、慶次の懐がもぞりと動いた。

顔を覗かせたのは夢吉であった。


「キッ」

「あ。夢吉、だっけ」

「キー」


夢吉はバッと慶次から名前に飛び移ると彼女の服にしがみつき、ひくひくと鼻を動かした。

慣れない手付きで頭を撫でてやると、気持ち良さそうに目を閉じる。

感動する名前を見て微笑んでいた慶次は、よし、と手を叩いた。


「夢吉も起きたとこだし、うちの中を案内するぜ」

「あ、うん」

「ほい、掴みな」


差し出された手を掴むと、ぐいっと引っ張り上げられた。

物凄い力によろめく名前だが、それを慶次が支える。


(お、ナチュラル紳士)


感動している名前をよそに、彼は手早く布団を片付けると、近くにあった上掛けを名前の肩に掛けた。


「そんじゃま、前田家を探検と行くか!」

「おー」

「キー」




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