佐助がいなくなり、一人になった名前は布団に横になった。
そしてほう、と安堵の笑みを浮かべる。
(ちゃんと謝れて良かった……)
あの時は本当に怖かったけど、今はもう怖くない。
首に手をやる。包帯の先に傷口があるが、あまり痛くはなかった。
(ていうか、初めて名前呼ばれた)
その事も少し嬉しくて、彼女は更に微笑んだ。
何なのだろう。この感覚は。
暗い廊下を歩く佐助は己の心中を不思議に思った。
ただあの少女に会って話して、ただ名前を呼ばれただけなのに、どうしてこんなにも心が凪いでいるのだろうか。
でも、嫌な気分じゃないのだ。
それは曖昧な彼の心の中で唯一確かなものだった。
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