境征参加 | ナノ




佐助は彼女の手にある白く長い布を見て、怪訝そうに眉を寄せた。


「あれ、包帯?」

「うん。ちょっと怪我しちゃって」

「え、ほんと?」


怪我をしていたと分かると、彼は膝をついて名前の手をとった。

流石はオカンだと彼女は少し感嘆していたが、佐助が不意に傷口に触れたので痛みでびくっと肩を揺らした。

どうやら傷の深さを確認したらしい。彼はすぐにごめんね、と謝った。


「結構深いね。何で切っちゃったの?」

「鋸で、木を切ってたらうっかり」

「鋸ぃ? あ、本棚作ろうとして切ったでしょ」

「知ってるんだ」

「清が嘆いてたよ、名前様はお召し物をすぐ木屑だらけにするって」

「アハ、アハハ」


その通りだから反論も出来ない。その上怪我までしてしまって、泣きそうな顔で怒る清の顔が目に浮かぶようだ。

佐助は傷口と、彼女の傍らに置いてあった薬箱を見て、首をかしげた。


「名前ちゃん、一人で治療したの?」

「ううん、幸村がしてくれた」

「……旦那が?」

「うん。怪我がばれちゃって、怒られながら」


そう言いながら、またあの時のことを思い出してしまった名前は引き攣り笑いを漏らした。


「ふぅん」


佐助は気のない相槌を打ちながら立ち上がると、縁側から庭に降りた。


「ちょっと待っててね、錆び抜き用に水汲んでくる」

「あ、いいよ」

「え?」

「それももう終ったから」


頬を少し染めながら曖昧に笑う彼女を見て、佐助は何か言いたそうに僅かに口を開いたが、何も言わずにすとんと縁側に腰を下ろした。



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