境征参加 | ナノ




例によって名前は一人で馬に乗れないので、政宗の乗る馬に同乗させてもらうことと相成った。

城門には手回しが済んでいたのか、馬一頭通れる程度に城門が開いていた。そこを通り抜け、なだらかな坂を駆け降りて町へと馬を走らせる。

しばらく走ると町の入口付近の小さな茶屋に辿り着き、出て来た店の男に馬を預けた。

そしてようやく町中を散策するに至った訳だが。


「伊達さん」

「何だ」

「笠、被って下さいよ」


政宗の顔立ちは非常に整ったものだ。

隻眼といえその鋭く切れ長な目に心まで射抜かれた者は多く、早朝だというのに、道往く女性たちが立ち止まっては彼の姿を目で追い、黄色い声をあげている。

そんな男の隣りを歩くのは気が重かった。

政宗は不遜気に笑うと、手に持っている笠をくるくると回して弄んだ。


「こんな笠ごときで、溢れ返る俺のauraが隠せる訳ねぇだろ」

「自分から言わないで下さい」

「それに髪型が崩れる」

「無造作じゃなかったんですか……」


呆れてしまった名前は、説得するのを諦めて1人だけ笠を深く被り込んだ。

それを横目に見た政宗は、何を思ったのか彼女の笠を取ってしまった。


「ちょ、何を」


空にひらひらと翳している政宗の手から笠を取り戻そうとしたが、届かない高さまで引き上げられてしまった。

不審感を綯い交ぜにした表情で政宗を見上げてみると、いつものあの不敵な笑顔をした目が合った。


「ほら見てみな」

「……?」


楽しげに空を仰ぐ彼につられて、名前も頭上を見上げた。すると彼女の動きが、止まる。


「夜が明けたぜ」


東の方の山間から漏れ出ていく光の眩しさと美しさに、彼女は息をすることも半ば忘れて見つめていた。


「笠被ってたら見れねぇだろう?」


その言葉に小さく頷いた。


 
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