境征参加 | ナノ




信玄からの命令を受け、佐助は影に姿を潜めながら不審な軍勢足取りを追っていた。


(足跡の数から考えるに、百以上百五十以内、ってとこかな)


ぬかるんだ地面に残された足跡の数を人目で確認すると、その足跡が向かっている場所におおよその見当をつける。

足跡が示す方角は妻女山方面で、そこには上杉の陣が敷かれている。これを見るだけでも、敵の思惑が知れる。


(上杉狙い、か)


敵はもしかすれば、武田陣営に伊達政宗が来ている事を知っている可能性がある。
政宗たちの行軍はお世辞にも隠密というものからは程遠かった。


(こら、どうなることやら)


万が一武田を狙ってきていたならば、佐助は今から全力で敵をかく乱する作業に入るだろう。
しかし敵方の狙いは上杉。指示を仰がねば何ともならない。


(取り合えず、大将に報告すっか)


そう考えて彼はその場を後に消えた。

佐助の読みは正しかった。しかし、唯一つ読み違えていることがあった。

敵は、上杉だけを狙っているのではなかった。複数の足跡にかき消されてしまっているが、その中には確かに、武田の陣営に向かって行軍しているものも、あったのだった。



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