境征参加 | ナノ



信玄は名前のそばから離れると、政宗の方に向き直った。


「伊達殿。其の方は如何される」


政宗は視線だけ信玄のほうに向けると、あごに手をやりながら思案顔をした。


「ふん。大方、あの変態野郎とくそ生意気なお子様が軍を引き連れて来てやがるんだろうが……」


政宗はつい、と部下たちのほうを一瞥する。その数は僅か十五騎程度。選りすぐった精鋭揃いとはいえ、物量作戦には絶対的に不向きである。

信玄は彼が言う「変態野郎」と「くそ生意気なお子様」いう表現に苦笑をもらした。


「やはり、織田の手下か」

「だろうな。織田は大所帯だからな、魔王サマは滅多に来やしねぇ」


端正な顔いっぱいに嘲笑を浮かべて、政宗は信玄のほうに体ごと向けた。


「武田はどうする。見ての通り、俺のとこは現在これだけしかいねぇ」

「ふぅむ……」

「武田がこのまま、奴らと戦をおっぱじめるってんなら手は貸すぜ」


いつもの粗野な口調に変わっている政宗の目には好戦的な光が宿っていた。

しかし、信玄はそこまで若くはない。
もう少し若ければ無茶もしただろうが、今は川中島の争奪戦の方が気がかりだった。

特に、長年の宿敵であり、心を通わせた友とよべる者のことが。


「やはり織田の出方を伺わねば、こちらも手が出せぬ」

「まあ、そうだろうな」

「奴らは何が目的でここへやってきたのか……」

「Ha? 簡単じゃねぇか」

「何?」


遠くのほうで聞こえる銃声に、眉間に皺を刻ませながら政宗が呟いた。


「……おっさんと上杉の首目当てだよ」



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