境征参加 | ナノ
目を閉じた。耳も塞いだ。
それでも聞こえてくる金属音。これは剣戟だろうか。
そしてその合間に聞こえる、叫び声。
悲鳴。
その人の人生の終わりを告げる最後の声。
悲鳴の中に見知った人物の声がないことに安堵しながらも、聞きたくないときつく耳を塞ぐ。
何度も蹴られた。
しかし、起き上がってあの剣戟の中に混じるより、こうやって地面に伏せて身を潜めておくのが一番安全なのは名前にも分かっていた。
(はやく、おわれ)
混乱する思考の中、きつく耳をふさいでひたすらにそう思う。
頭上では喧騒がいまだ絶えない。幾度も体に衝撃が走ったが、彼女はうめき声をあげることもなかった。
ただひたすらに耐えた。
そうして、やがて剣戟の音も収まったころ、不意に彼女の肩は重力とは正反対の方向へ持ち上げられた。
(かたくら、さんだ)
先ほど、「起こしにくるまで動くな」といい含めた張本人だ、ああようやく終わったのだ。
名前はその力に便乗して急いで起き上がろうとしたが、全く体に力が入らなかった。
持ち上げられるままになっていると、土と泥に塗れた体が半回転をして空を仰いだ。
肩が少し痛んだが、悲鳴すら上げることができなかった。
そして薄くまぶたを開くと、土ぼこりで黄ばんでいる空に走る金色に、一瞬目を奪われた。
prev next
back