境征参加 | ナノ




佐助は、表面上は至極冷静な態度でかすがに案を持ちかけた。


「……かすが。ここはお互い引いたほうが身のためだと思わないか?」

「……」

「多分伊達の狙いは、軍神だぜ」

「……!?」


それを聞いてかすがの顔色が変わった。

佐助は余裕ぶった表情を変えずに続ける。


「伊達と武田が同盟を結んだって話、聞いてるよな」

「……ああ」

「伊達は武田と戦わない代わりに、上杉とやりあうつもりだ」


伊達軍は今回、同盟相手である武田軍の定期連絡が途絶えたため、その安否を確認するために川中島にやってきたのだろう。

だが何故そこに、伊達政宗本人がいるのだ。

普通、安否の確認なら忍か部下に任せればいい。それを、何故当主自ら指揮を執り少数だが選び抜かれた精鋭を連れてきているのか。

奥州の若武者といえば、自分の独眼で見たものしか信じないという血気盛んな部分があるが、今回は話が違う。

危険すぎるのだ。

何せ、戦のど真ん中である。
伊達政宗本人も、「武田の虎」「上杉の軍神」と喩えられる双方の実力を知らないわけはない。

大方、確認と言っておいて武田軍の援軍として上杉軍と戦をするつもりだろう、と佐助は推測した。

そのことに今更思い当たった彼は歯噛みした。

伊達政宗は南に領地を拡大したがっている。
援軍と銘打って堂々と戦に参加し、上杉謙信の首を取るつもりだ。


「俺様んとこは多分心配ないだろうけど、かすがんとこはやばいんじゃね?」

「くっ……!!」


かすがは謙信の身に危険が迫っていると知ると、途端に落ち着きがなくなった。



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