境征参加 | ナノ




そんな言い訳にも似たことを考えていると、重々しい音を発しながら門が開いた。

もちろん原動力は人力であるから、両開きの扉の両側には大勢人が集まっていた。


その門をくぐると、目の前には城下町が広がっていた。
上田城の城下町と勝るとも劣らないほどの大勢の人が、活気をもって動き回っている。

その町の中に政宗は馬を歩かせると、すぐに道が割れるように拓いた。


(おお、これが噂の大名行列ってやつ?)


名前の脳内で大河ドラマの「頭が高い」と言われて道の両脇にひれ伏す農民たちのシーンが浮かんだ。

しかし、それを叫ぶ人も頭を下げる人もいない。

皆一様に政宗の帰りを出迎えるため顔を上げ、その顔は喜色満面だ。


(……あれ?)


「お帰りなさいませ、政宗様!」

「筆頭、お疲れ様です!」

「キャアア政宗さまー!」


もう少し大名と町民たちの距離は遠いと思っていたのに、町民が発する声や黄色い声に政宗は笑いながら時には手を振ったりしている。


(何だか、すごい人気だな)


飛び交う声に少し呆然としながらも、人は見かけによらないものだと彼女は顔を綻ばせた。

あの政宗に民を思う一面もあるとは思ってもみなかった。


(良い領主様なんだなぁ)


一瞬今までのお返しにそういってからかってやろうという悪戯心が沸き起こったが、間違なく拳骨が飛んでくるので大人しく口を噤んでおいた。



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