意外に手先は器用らしい幸村は、手際よく治療を進めていく。
ずっと不器用だと勝手に思い込んでいた名前は内心驚嘆していた。
小刀を使い、包帯を二つに裂いてそれを交互に指に巻く。指先まで巻き終えるとそこで小さく結んだ。しかも蝶々結びである。
(佐助直伝かな)
あの忍ならこうして教えそうだ、と名前は忍び笑った。
その小さな笑みを見て、幸村は不思議そうに首を傾げる。
「どうかしたでござるか?」
「ちょっと、結び方が可愛いなぁって思って」
「な……! そ、某はこれしか知らぬゆえ……」
「佐助に教えてもらったの?」
佐助、という言葉を発すると幸村は何故か一瞬眉を潜めたが、すぐにいつもの少しぽやついた顔に戻った。
「うむ。怪我の治療法はみな佐助から教わった」
「へー。さすが武田軍の母」
「……? 佐助は男でござるよ?」
「ああ、比喩だよ比喩。お母さんみたいに面倒見がいいって事」
「成る程。確かに、あ奴の作る飯は美味い」
「食べてみたい……!」
「今度頼んでみるといいでござる」
「そうする」
prev next
back