幸村の性格を考えると信玄に逆らえるはずもない。
その話題に決着がつくと次の話もすぐに済み、名前たちは解放された。
長時間座りっぱなしだったため足が痺れたし腰も軋んでいる。
立ち上がって大きく伸びをすると欠伸がのぼってきた。
それをかみ殺さずに大きな口を開けると、後ろから笑い声が聞こえてきた。
「……佐助、笑ったな」
後ろにいたのは佐助だった。面白そうに笑っている。
「いやね、あまりにゆるいからさ」
「何が?」
「これから遠いとこ行かされんのに」
「あー、それねぇ」
生理的に出た涙を拭いながら名前は答える。
「不安じゃないわけじゃないけど、怖くはないから」
じゃあおやすみ、と言い残して背を向けたが、するりと隣に佐助がやってきた。
「遅いし、送るよ」
「送るって。別にいいよ、部屋近いし」
「実はまだ話したいことあんだよね」
「ふぅん」
二人は同じリズムで歩きだした。
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