境征参加 | ナノ




そして次の瞬間には大騒ぎとなった。
騒ぎ出したのは実質二人だが。


「え、マジで? 名前ちゃんがうちにくるのぉ!?」


伊達側では、成実が目の色を変えて騒ぎ出した。


「やったぁ! 前々からあの城、もっと女の子増やしてほしかったんだよねぇ」

「成実、騒ぐな」

「これであのむさくるしい米沢城が少しはマシに」

「ったく、テメェは」


伊達側は曲がりなりにも喜んでいるようだが、武田側は騒然となっていた。
主に幸村が。


「お、お館様! 今の話は本当でござりますか!?」

「うむ、事実だ」

「なっ何故わざわざ奥州まで名前殿を!? ここに残すか、いっそ川中島まで連れて行き我らで守ればよいのではありませぬか!」


幸村の説得に、信玄は渋い顔で顔を横に振る。


「戦えぬ名前を、川中島に連れて行くわけにもいかぬ。しかしここに置いていけばもしもの時に守りがおらぬだろう?」

「上田城とは堅牢無比で知られる城でござりまする!」

「幸村、慢心するでない。何事にも穴はある」

「お、お館様……」


しゅん、と項垂れた幸村はちらりと名前を見た。
その目があまりにも哀しそうだったので、思わず「私も嫌だ」と言いたくなったが、ぐっと堪えた。

信玄の言い分はもっともであると彼女は考えていた。
戦場に戦えない者を連れて行くなど、普通ならば決してしないはずだ。その者の身を案じていれば尚更だろう。

心配されている、と思えば不安も少し治まった。



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