境征参加 | ナノ
「さて、早速今後の話し合いだが……」
信玄のその言葉を皮切りに、色々な議論がなされた。
これからどうやって織田を攻めるか。兵士や物資の供給、周辺国との同盟も話題に上がった。
どうやら彼らは、伊達と武田のみの同盟だけでは終らせるつもりはないようだ。
難しい内容ばかりで、話の半分も理解できないのだが、それでも名前は一字一句聞き漏らさまいと真剣に聞いていた。
そうして、彼女のことが話題に上がった。
「時に政宗殿。名前のことで頼みたいことがある」
「名前のこと? ふぅん、何だそりゃ」
にやり、と笑う政宗と目が合って思わず頬が引き攣ってしまった。
信玄はごほんと咳払いをすると、真面目な声で話し始めた。
「今より七日後、武田は上杉と戦をすることになった」
「……川中島、か」
「ああ、そうだ」
大きく頷く信玄に、名前は思わずつばを飲み込んだ。
(『川中島の戦い』だ……!)
武田信玄と上杉謙信といえば川中島の戦いをおいて他はない。
過去五回戦ったが、決着がつかなかったという。
「確か、これで五回目だよな」
「そう考えたら、あ奴とはえらく長い間戦っていたのだな」
好戦的な笑顔で酷く楽しそうに一人ごちる信玄に、政宗は問う。
「で、要はそいつを預かれってことだろ?」
「流石、話が早い」
「いいぜ、乗った」
「そう言っていただけてありがたい」
「……え」
話のつかめていない名前と、幸村、佐助、小十郎、成実の声がものの見事に被った。
軽くパニックになりながらも、自分のことらしいので名前は質問する。
「えと……どういうことなんでしょう。話があまり分からないのですが……」
その問に答えたのは政宗だった。
「おいおい、今の話ちゃんと聞いてたか? あんたをうちで預かるんだ」
「てことは、もしかして……」
「そう。暫くの間、あんたは奥州に住むことになる」
室内が水を打ったように静まった。
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