境征参加 | ナノ




話し合いは信玄の自室で行われるらしい。
何度も来ている場所だが、どうも彼女は慣れなかった。
信玄の部屋だからだろう、と内心考える。

名前の他に居たのは、同盟相手の伊達政宗とその部下、片倉小十郎と伊達成実。
武田側では真田幸村がいた。尋ねてみると佐助も天井裏に居るらしい。

幸村は名前の姿を認めると真っ赤な顔をしながら、それでも彼女に近寄り、あろうことか額を畳に擦りつけ、いわゆる土下座をした。

名前は絶句である。


「名前殿! この度は某の不始末で、は、はは破廉恥な事をしてしまい、まことに申し訳ござらん! か、かくなる上は一つ腹でも……」

「わぁぁああああ! 切腹だけはやめてー!」


真っ赤になって震えながら小刀を取り出した幸村を、慌てて名前が制止すると同時に、天井裏から佐助も出てきた。
珍しいことにかなり慌てている。


「だ、旦那! 抱きついたくらいで腹切るとか滅多なこと言わないでよー!」

「そ、そうだよ幸村! 減るもんじゃないんだし!!」

「だよね! 減ったら困るよね!」

「そうだよ! いやむしろ嬉しいかもしんない! 細くなるし!」


二人ともパニックになりながら訳の分からないことを言い合っていると、そのうち説得できたのか、感極まった表情で幸村は深く頭を下げると元の位置に戻っていった。

かなり早口で捲くし立てていた二人は息も絶え絶えになっていた。


「あー、びっくりした……」

「切腹なんてされた日には俺様たち路頭に迷っちゃうよ……」

「されなくて良かったね……」

「本当だよ。もう、旦那ってば……」


ぐちぐちと言い合っていると、信玄が盛大な咳払いをした。どうやら今から始まるらしい。

今さら天井裏に戻るわけにも行かないので、佐助は名前と共に信玄の斜め後ろに腰を下ろした。



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