境征参加 | ナノ
「オルァアアアアァ!」
ドスの効いた掛け声と共に、刀を使って物凄い速さと腕力で小十郎は地面を抉っていった。
その勢いとありえなさに名前は思わず叫んでしまった。しかも結構小十郎から離れているというのに、顔や頭に土が降ってくる。
「に、人間ショベル……」
あまりの勢いに顔をが引き攣りそうになったが、間もなくそれも終った。
「ふう、こんくらいで良いだろ」
「じゅ、十分すぎやしません……?」
小十郎の隣には彼の身長を越える程の土の山が形成されていた。
しかも違う箇所に二つ。
彼は本当は政宗に対して何か恨みでもあるんじゃないのか、と内心思ったが口には出さず、曖昧な笑顔を浮かべておいた。
「これが鍬なら、もっと掘れたんだがな」
(良かった刀で!)
小十郎の独り言を聞いてしまった名前は震えそうになった。
額にうっすら浮かんだ汗を拭いながら、小十郎は空を仰ぐ。
「後は奴が戻ってくるのを待つばかりだが……お」
丁度その時、空に黒い影が現れた。
「お待たせー」
巨鳥の足から手を離し、地上に軽やかに降り立った佐助が持っていたのは大きな桶一つである。
小十郎の量に比べると些か、というかかなり物足りない。
「え、佐助、こんだけ?」
「うん。十分!」
「でも、そんだけじゃ意味無いんじゃないの?」
「もー、分かってないねぇ名前ちゃんたら!」
へらへらと笑いながら、佐助は二つある土の山のうち一つに近寄ると、桶の中身をどばっとぶっ掛けた。
水を吸収した土は急速に湿っていく。
佐助は土の状態を見て笑顔になった。名前は逆に顔を蒼くする。
「よし、いい感じ」
「……あの、佐助さん?」
「なーに?」
「その湿らせた土は何にお使うつもりで……?」
「旦那にぶっ掛けるんだけど?」
「やっぱあんたら主人のこと嫌いだろ」
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