境征参加 | ナノ



「やはり俺は力づくで止めるべきだと思うぜ。丁度ここには俺と手前がいることだしな」


にやりと唇の端を上げる小十郎の姿が、名前には抗争に首を突っ込む例の筋の人のように見えてしまった。

ヤクザスマイルを浮かべた小十郎の腕を拝借している身分の名前は、しかし断固反対した。


「あんなのに突っ込んでいくなんて怪我するだけですよ!」

「じゃあ他にいい考えあんのか?」


ヤクザスマイルから一転、コンバットモードのヤクザフェイスを向けられた名前はたじろいだが、やけになって言い返した。


「何か適当に土とか水とかかぶせたらどうですか! あの人たち雷と炎だし」


答えた名前は口に出した瞬間後悔したのだが、意外にも二人は考え込みだした。


「伊達の旦那は雷、旦那は炎……うん、確かに間違ってはいないね」

「……へ?」

「土なら政宗様のお体に怪我を負わすこともないしな……。汚れちまうが風呂にはいりゃ問題ない」

「水も……まあちょっと旦那が濡れ鼠になるだけだし、日常茶飯事だし」

「へっ!? ちょ、ちょっとお二人さん?」


慌てて待ったをかけるが、二人は聞いてくれない。


「おい猿飛、水用意できるか?」

「勿論。じゃあ右目の旦那は端っこの方掘り返しといてくんない? 二人分」

「二人分かよ。……チッ、仕方ねぇ。分かった」

「ちょっとお二人さーん。今の冗談なんですけどー」


属性技使うなんてポケットなモンスターかよ、と誰かにツッコんで欲しかった名前だが思いだした。此処では誰も知らないのだ。

名前の制止も耳には入っていないようで、二人はそれぞれ振り分けた仕事をまっとうすべく移動を開始した。


「じゃ、右目の旦那、頼んだよ」


佐助は空に手を挙げると、その手に導かれるように大きな巨鳥が何処からか飛んで来た。

確か慶次を探しにきた時ぶら下がっていた鳥と同じだな、と彼女は思っていたのだが、なんというか、でかい。

前はそんなに大きいと思わなかったのだが、あれは遠くにいたからだろう。
今はかなり近くに飛んできているため、大きさがちゃんと分かる。

そこはかとなく鳥から距離をとるように小十郎の腕を掴んだまま彼の背に移動した。
そのことに対してか、上から苦笑のような仄かな笑い声が降ってきたのだが気にしている場合ではなかった。

佐助はその鳥の足に掴まると、地を蹴った。タイミングを見計らったのか、巨鳥も大きく翼を羽ばたかせる。
そうして佐助は空へと上っていき、何処かへ去っていってしまった。


(鳥使い、佐助……)


呆然と異名のようなものを考えていたら、不意に小十郎の腕が動いた。


「わりぃが、ここ座ってろ」

「え、あ、はい」


腕にしがみついている名前をもう片方の手で支えながら、わざわざ城の前の石階段のところまで運ぶと、小十郎は城壁の端の方へと歩いていった。

なんだか嫌な予感がする。

先程の話を実践するというなら。



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