境征参加 | ナノ
しばらくしてようやく解放された鼻は予想通り赤くなっていた。
心の中で佐助に悪態をついて鼻を押さえる。
そうしながら、佐助が犠牲になってしまうという現状を打開すべく名前は一つ提案をしてみた。
「何か他のものに興味を引かせる、ってのはどうでしょ」
「ほう。面白そうだな」
その提案に小十郎がのってきた。
提案なんておこがましいと思ったのだが、意外と反応があって彼女は少し驚いた。
佐助は考えているようで、顎に手をやっている。
「他のものって、たとえば?」
「伊達さんは分かんないけど、幸村なら甘味、とかさ」
「右目の旦那、何かある?」
佐助からの問に小十郎は渋い顔で頭を捻った。
「政宗様はよく酒を飲まれるが……真田との戦よりは劣るだろうな」
「それ同感。うちの旦那も戦の方に目がいくんだよなぁ」
「えー……。だめかぁ」
がっくりと肩を落とす。
興味を引く作戦が無理となると、もう力づくという強硬手段を取るしか思い付かない。
しかし、生憎ここにあの二人より力のあるものは居なかった。
辛うじて佐助と小十郎がいるが、よほどのことがなければ主に手など出せない。
三人がどうしようかと頭を悩ませている時、突然こちらまで被害が及んできた。
繰り出された雷が襲い掛かってきた。
どうやら今現在、政宗が乱発しているらしい。
佐助は身軽に、小十郎は名前を抱えたまま攻撃を避けた。
「すまぬ、お三方!」
「わりぃな! Ha!」
加害者である政宗と幸村は言葉では謝ったもののすぐに戦いへと戻ってしまった。
また金属同士がぶつかり合う音が響く。
被害が及んだのは三人だけでなく、政宗の連れてきた騎馬兵の数人が地面と仲良くなっていた。
早く取り押さえないとそろそろ本気で危なくなってきている。色々と。
「ああ、今度は違うとこに穴が……」
佐助が修復したところとはまた別の箇所がぽっかりと穴が開いているのだ。
しかも二つ。
なので今現在、城壁に穴は三つある。
佐助は絶望したように地面に膝をつけて項垂れた。
その肩に小十郎は慰めるように手を置いた。
「安心しろ、半額出す」
「本気でお願いします」
佐助は物凄い速さで顔を上げて小十郎の申し出に即答した。
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