境征参加 | ナノ
一通り汚れを払ってやった後、佐助はその笑顔に苦いものを含ませて、小十郎に顔を向けた。
「それにしても俺様たち、お互いに苦労が絶えないみたいだねぇ……」
「……」
言葉には出さなかったが、小十郎の言わんとしていることを感じ取ったらしい佐助はまた苦笑した。
「そろそろあの二人止めなきゃだけど……どうします?」
「それは……」
小十郎は、未だ戦っている政宗と幸村の姿を見て言葉を濁した。
そして目は佐助に向けながら、戦っている政宗と幸村の方をあごでしゃくる。
「……てめぇ、止められるか?」
「無理無理無理! 俺様長生きしたい」
否定の意を示すように佐助は必死で手を振る。
小十郎は額に手をやって眉を顰めた。
「あの方はひとしきり暴れないと止まらないお方だからな……」
「ひとしきりってどんくらい?」
「そうだな……。あの城門を破壊する辺りで収まるだろう」
「……ちょっと俺様頑張ってくるわ」
小十郎のその一言に佐助はふらふらと大型の手裏剣を構えると、剣戟を繰り広げている二人へと歩み寄っていった。
その背中に名前は声を掛ける。
「さ、佐助、止めときなよ!」
「だって俺様がいかないとまた俺様の仕事が増えるしぃー」
「仕事なら私手伝うってばー」
「名前ちゃんのお手伝いなんか雀の涙くらいでしょー?」
「言ったな! ――これでも喰らえ!」
「――あいた!」
名前は足元に落ちていた大き目の石を拾うと、大きく振りかぶって佐助の後頭部目掛けて投げつけた。
幸か不幸か、その石はものの見事に佐助の後頭部へとぶつかり、思わず彼はその場にしゃがみこんだ。
まさか当たるとは思っていなかった名前は頬を引きつらせた。
「……あ。佐助ー、ごめーん」
「人様に向かって石投げちゃだめって教わらなかったの!?」
頭を摩りながらこちらへと戻ってきた佐助は、とりあえず名前の鼻を思い切り摘まんだ。
あまりの痛さに、名前は目を剥いて抵抗をする。
しかし抵抗しても佐助の腕っ節には敵わないのは自明の理である。
「い、いたい! やめてー!」
「俺様はやられたらやり返すのが主義なの知ってたよね?」
「は、はなあかくなる!」
「大丈夫大丈夫、名前ちゃん赤似合うから」
「かんけーねー!」
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