境征参加 | ナノ




「んで、さっき何話そうとしてたの?」


佐助の言葉でようやく話を思い出した。


「あの二人ってライバル同士なの?」

「らいばる?」

「あー……ごめん。好敵手って意味」

「名前ちゃーん、約束は?」

「ごめんなさいごめんなさいだからお手を納めて下さい佐助様」


背筋が寒くなるような笑顔のまま、すうっと名前の顔へと伸ばされた手を、渾身の力を込めて押し返した。

必死そのものである名前を見て佐助は苦く笑うと「今回だけね」と手を納めた。
そのおかげで彼女はものすごく安心したのだが。


「……おい」

「うひぃ!」


背後からドスの効いた声がかけられたので、名前は文字通り地面から飛び上がってしまった。

腰が抜けて地面にへたり込んでしまったが、慌てて後ろを振り返り、頭上を見上げる。そこには。


「か、片倉さん……」

「そんなに驚くことかよ……」


バツが悪そうに腕を組みながら、小十郎が立っていて彼女を見下ろしていた。

血の気が音を立てて下がったような気がした。


(き、聞かれた!?)


片倉小十郎といえば、伊達政宗の臣下だ。

主が英語をしゃべるのなら、意味を知っているかもしれない。
たとえ知らなくても、今さっき彼女が発した「ライバル」という言葉が日本語ではないことくらい分かるだろう。

一体どうやって切り抜けようと冷や汗を垂らしながら頭を回転させていると、小十郎は眉を顰めたまま溜息を吐いた。



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