境征参加 | ナノ



その剣の元にいたのは、政宗だった。

髪の間から見える左目に、好戦的な光を灯し、幸村を見据えている。


「客放ったらかしたぁ、どういうこった」


そして、幸村の服装を見て口の端を上げる。
紛れもない戦装束に、二本の槍。


「手厚く歓迎してくれるんじゃねぇのかよ」


その皮肉めいた言葉に幸村はにやりと笑う。


「申し訳ない。そうでござった」


言い終わるが早いか、彼はもう一本の槍で政宗の腹部を狙う。

しかしそれは、三本の刀によって阻まれた。


「おぉっと! 危ないねェ」


指の間に三本の刀の柄を握り、ギリギリと金属音を立てて幸村の槍を防いでいる。

三本もの刀を片手で難なく操っている政宗の姿に、間近で見ていた名前は目が点になった。


「うっそ……な、何刀流……?」

「六爪流ってんだよ」

「え? ――うわぁ!」


すぐ後ろで聞こえた佐助の声に振り返ろうとすると、その瞬間、目の前が迷彩で一杯になった。

驚く間もなく両腕の下に腕を差し込まれたと思ったら浮遊感がして、激しい痛みが走る。
しかしそれも足の裏が地上についた感触がするとすぐに解放された

どうやら彼女は佐助の胸元に顔を押し付けられて運ばれたらしい。

顔を見上げると、疲れた表情の彼と目が合った。


「どっか怪我とかない?」

「え? ううん、特に。腕痛いけど」

「ごめんね。でも腰とかより良かったでしょ?」


俺様の服の上で吐かれたら嫌だしね、と溜息を吐く佐助にそこはかとなく殺意を覚えたが正論だったため反論できなかった。

代わりに、質問を浴びせかける。


「どうして幸村、伊達さんと戦ってんの? あの二人どういう関係?」


何故二人が戦っているのだろう。敵とはいえ、今は政宗は信玄の同盟相手で一次的に仲間になっているのに。

しかも結構戦い様が本気である。城壁の一部がまたしても抉れていた。
しかもこの前直したところだったので佐助は呻き声とも唸り声とも判別できない声を上げた。


「……二人の顔を見てみな」

「顔?」


修繕のことで頭が痛くなったのか、頭を抱えた佐助の言葉に従い、彼女は幸村と政宗に視線を戻す。


「……あ」


なんとなく分かった。




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