そうして彼女は理解してしまった。自分がどのような状況に置かれているのかを。
まさか、ありえない。これは夢に違いない。
けれどこの緊張感と、首に残る痛みは本物だ。
ああ、これが噂の。
「のぅ、名字名前。結局、お主は何者なのだ?」
信玄の質問に、彼女は腹を括った。
「私は……平成の、人間です」
「?」
「東京都で育って、今年受験を控えた高校3年生です」
「……儂の分かるような言葉で言ってくれ、聞きなれぬ言葉ばかりだ」
ああ、やはり。
「貴方がまだ生きていることを鑑みて、ここの時間は、多分西暦1540年から1570年です」
「う、うむ」
「そして私のいた世界は、今から約450年先の、……未来です」
空気が停止した。
これが噂の、タイムスリップとかいうやつらしい。
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