世の中には、不可思議な事が3つある。

一つ目は、政治家の脳内。
政治がしっかりしなくては、日本はいつか滅びてしまう。

二つ目は、クラスの女子。
やたらキャーキャーうるさくて、好きな男子には媚を売る葛。



3つ目は――トリップ。
宇宙や未確認生物よりも、未知の世界に"トリップ"すると言うことが一番不可思議だと私は思う。



一般的、アニメが好きな女子は「トリップしたい」「好きなキャラクターと結ばれたい」等と、戯れ言をほざいている。


嗚呼、吐き気がする。


まぁ、"トリップ"なんて興味はないけど。






―――とは言ったけど。

やっぱり気になる。

学校の屋上で、私はヘッドホンをしながらクラシックっぽい音楽を聞いていた。

曲は最近流行っていたVOC@LOIDっていう歌うソフトウェアの楽曲で「カンタレラ」と言う。

ヴァイオリンを弾くのが趣味な私にピッタリな音楽だった。


聞いていると、心まで和む。

そう思い、目を瞑ると変な浮遊感に見舞われた。


嘔吐しそうなのを堪え、目を開けるとそこは純白に染まった世界。


―私、さっきまで屋上にいたのに。


何故だかは、数秒たって分かった。
これが、俗に言う"トリップ"か。


「よく分かったね♪流石天才♪」


思い悩んでる処に空気の読めない声が響く。

―なんなんだ、このピエロは。

なんか頭の上に黄色いリング乗っかってるし。
何気にお洒落なスーツだし。
変な杖持ってるし。
柄キモい。


「散々な言われようだねぇ。僕だって傷付くんだから!!」

『…黙れ』

取り敢えず黙らせたい。このバカを。
ウザいったらありゃしない。


「もうっ!!そんな事言ってると四次元に飛ばすよ?」

『…よりによって空想世界かよ』


「口悪ゥ〜…せっかく君を"イナズマイレブン"の世界に飛ばそうかなぁ♪って思ってたのに」


溜め息とは裏腹に顔がにやけてる変質者とも言える目の前のコイツ。

蹴り飛ばしてさっさと家に帰ろうかな。


「ざ〜んねんッ☆君はもうお家に帰れませ〜ん♪」


『……は?』


「僕は神なんだからそのくらい出来るようっ!!…へぶッ!!!」


『………』

一つ一つの口調が苛ついて思わず蹴っちゃった。

私は何も悪くないんだ、うん。


「痛いじゃんかぁッ!!!ムカついたぁ!!!君の拒否権なんか無しでイナズマイレブンの世界に連れ込んでやる!!」


『…うっせぇ』


「でも条件が必要なんだよね〜…」


自称神は、顎に手を添え悩み込んだ。
合わない姿に条件とやらを私が聞くと回りに花が飛び散った。

「条件は、君が3つの願い事を言うこと!それから〜…申し訳ないんだけど、僕からのお願い聞いてほしいにゃ♪」


『3つの願いと…お願いねぇ』


何処かで聞いたことある語尾はスルーして3つの願いを考えた。


「なーんかよく分からないけど、結城沙苗って言うやつをトリップさせちゃってさぁ。
物凄く妄想好きでね?毎日毎日トリップしたいなんて言ってたからイラついてトリップさせちゃった☆
願いは確か〜…"逆ハーレムにしたい""運動神経を良くしたい"〜…っと、あともう一つなんだっけ。」



再び悩み込んだ自称神は、あっ!と声を甲高くだし、私の肩を掴み叫んだ。


「アイツの好き勝手にさせないでほしい!!じゃないと完璧な"物語"にならないんだ。」


『……物、語…』



結城沙苗が何したかは知らないが、物語が壊されるのは気に食わない。

完璧な編成を行った物語は、私が最も大好きなものだ。

"完璧"という言葉に執着しているのは分かっていた。

ただ、好きなんだ。

完璧な世界が。


『…良いよ、トリップしてあげる。』

「ほ、本当に!!?」

『…そうだね、条件は…』

「?」

『"綺麗な家の覚悟""盗聴器"…それと…"  "』

「!…そんなので良いの?」

『完璧じゃない…作ってやるわ。完璧な編成を行った物語を』






物語は、始まったばかり。









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