俯きがちに現れた、彼の素顔。

光沢を放つ艶やかな漆黒の髪と、最高級を誇る黒曜石の様な瞳。



最初は見慣れない色に絶句していたギルバートだったが、次第にその容姿の美しさを認識して行く。

しかし、単純にただ端麗と言う一句では表せるものではない何処か不可思議な雰囲気を彼から感じた。



アンジェリカはドラクールを室内に招き入れ、椅子に座らせた。

「あなた、名前は?一体何をして保安官に追い掛けられてたのよ。」

「名前は…アルカードと呼んでくれ。俺、別に何もしてねェよ。」

彼はそう左右に首を振り、困惑した様子を見せる。その仕草は外見よりも何処か幼いものだった。



「ねえ、アルカード。普段ちゃんとご飯食べてるの?」

「は?飯?普通に食ってるけど。」

質問の意味が分からず、ドラクールは首を傾げる。

「すっごいがりがりじゃない。」

鎖骨や胸元にアンジェリカは目を遣り、呆れた様に溜息を吐く。

「…そうか?」

「そうよ。女の私より細わよ。」

「それは最近お前が太っ、」

「何か言った?ギルバート。」

乾いたギルバートの細い笑い声が狭い室内に響いた。



ドラクールはギルバートから視線を外さず、じいっと見詰めている。及び腰のギルバートは困惑を隠せない。

「な、何だよ?」

「なあ。あんたってもしかして…、バレンティナの人間か?」

「そうだけど、それが何?」

アンジェリカは腕を組み、むっとしたように顔を顰める。

「いや、だって、俺は…この国の人間は、あんた達の敵って事だろ?」

彼女はきょとんとした後、口を開けて笑った。

「だから何よ。その子供みたいな考え、止めた方が良いわよ。」

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