「僕は彼を、統合幕僚長に推挽する。」
━━…何だ?それ。
様々な疑問に満ちたドラクールの瞳はリュユージュに固定されたままだった。
「僕が興した国防軍海兵隊は、『シュラーク』と『ブリッツ』と言う名の二つの異なる部隊から構成されているんだ。」
ドラクールはリュユージュの説明に耳を傾ける。
「シュラークは上陸した敵地での戦闘が主な任務の部隊で、意味は『打撃』だ。ブリッツは直訳すると『稲光』。急襲を意味するこちらの部隊が、戦地までの隊員の輸送を担当する。」
━━兵隊を運ぶ役割と、其処で戦う役割って事か。
「リッセはシュラークの、マックスはブリッツの代表だ。その両方を束ねる役割、それが統合幕僚長。君の階級だ。」
「…俺!?」
ドラクールは衝撃の余り、素っ頓狂な声を出して焦燥の表情を見せた。
「実際には、最高総司令官の僕が統率も指揮も行う。統合幕僚長は、僕の更に上の階級だよ。」
彼はただ唖然としている。理解不能な事柄が多過ぎるのだろう。
「統合幕僚長の地位は、君でなければ務まらない。君じゃないと駄目なんだ。」
「な、何でだよ?何で…、俺なんだ?」
「さっき言っただろ。君は何にもしなくていい、と。それは今に限った話しじゃないよ、何時でもそれは変わらない。僕と共に来てくれるだけで、それだけでいいんだ。」
リュユージュは翡翠色の瞳でドラクールを見据える。
「と言うか、君以外の人間に使役されたくないのが一番の本音だけどね。僕の上に立つのは、君にしか許さない。」
「我儘かよ!一体、俺に何が出来るって言うんだ。」
「随分と馬鹿な質問をするね。」
「…っざけんな!そういう事か!」
ドラクールは立ち上がると、リュユージュに向かって声を荒げた。
「結局はお前も連中と一緒かよ!?俺を利用したいだけか!?」
「はあ?何を言ってんだか。僕に利用されたいなら、もっと役に立って見せろよな。」
リュユージュは呆れたように、頬杖を突いて溜息を吐く。
「君、今の僕の説明を聞いて自分に出来る役割だと思ったか?」
「思う訳ねェだろ!つーか、俺には"他の事"なんか何も出来ねェよ!」
下らない、と、リュユージュはぽつりと呟いた。
「未来が視えるから何だってんだ。変えられなければ、その日に向けて覚悟を決めるくらいにしか使い道がないじゃないか。つまり、君の持つ能力は僕にとっては何の価値もない。」
「…未来?」
マクシムとユーリスィーズは同時に言葉を発した。ドラクールは二人に交互に視線を遣った。
マクシムは驚愕して目を見開いているし、ユーリスィーズは怪訝そうに目を細めている。
対照的な二人だ、と、ドラクールは感じた。
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