勇往邁進



迫り来る日限を目前に、決断を下した。






「来い!」

「うん!」

まるで運命を暗示しているかの様な東雲を背景に、リサはドラクールの手を強く握り締めた。

黎明を決して逃すまい、と。



馬が走り出しその蹄が律動を奏で始めると、ドラクールの脳裏には強烈な記憶が蘇った。

左腕に抱え込んだハクが幼き日の己と重る。フェンヴェルグに身を委ねた、愚かで易き過去。

暗影は心を占め始めたが、掻き消すべく彼は顔を上げて前方を見据えた。

未来を。希望を。

彼等に出会うまでは意義や価値が理解出来ずに捨て置いていた、それらを求めて。









「何、この臭い。」

馬を降りたリサの最初の感想だ。

「臭いね。」

同意したハクも左手で鼻と口を覆う。

「水道が整備されていないんだ。下水が垂れ流しだからな。」

ドラクールは予め用意して来た水を馬に与えると、小脇に荷物を抱えて先頭を歩いた。

「じゃあ水がないの?」

リサはミサをおぶい、横に並んだ。

「いや、井戸がある。」

そう説明しながら摩天城に向かっていると、近付いて来る人影が見えた。

ドラクールは警戒してリサとハクを背中に隠す様にしたが、すぐ必要のない相手だと判明した。



「また会えるとは思わなかったよ。」

彼等の前に現れたのは、相変わらず覚束ない足取りの少女だった。

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