その瞬間。
リュユージュは、自分を貫くかの様な鋭い気配を察知した。それと同時に、凄まじい風圧が駆け抜ける。
彼は敏捷な動作で臨戦態勢を取ると、風圧の正体である白刃の攻撃を受け止めた。
「な…!?」
彼等は顔を合わせて酷く驚倒し、お互い目を見開いた。
「ルード殿!?」
それは、ロザーナだった。
彼女は我に返ると、速やかに刀を鞘に収めた。
「誠に申し訳ない!貴殿を斬るつもりなど、毛頭ない!」
そう謝罪しながら、ロザーナは左膝を折って屈服を示す。
「悪いけど、後にして。」
リュユージュはロザーナを一瞥すると、リサに視線を戻した。
リサは恐怖を湛えた瞳で、ロザーナに助けを求める。その右腕を伝う鮮血を目にした彼女は、状況を理解した。
「ルード殿。貴殿は何故、此処へ?」
ドラクールはロザーナに視線を移す。
━━この二人は知り合い…なのか?
先程リサが研いでいた刀剣の持ち主である彼女と会するのは初めてだが、この難局を打破する為に何か策はないかと、二人の会話に耳を傾けた。
「貴女には関係ない。」
リュユージュはロザーナに背を向けたまま、冷淡にそう言い放った。
「そうなのだが、手段が余りにも盲目的でな。急いては事を仕損じる、それが分からぬ貴殿ではあるまい?」
当然、ロザーナは深い事情は把握していない。
だが、リュユージュの白刃の標的がリサであるという、現状。それだけは彼女にも間違いようが無かった。
ロザーナは眉間に皺を寄せると、厳しい視線をリュユージュに向けた。
「貴殿が子供を斬ると仰せなら━━…、不本意ながら、今一度お相手仕る。」
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