「おい、ちょっと待て。調査ってどういう事だ。一体、何をするんだよ?」
ドラクールは焦燥の表情で、リュユージュに詰め寄った。
「何って、国勢調査と住民登録だよ。僕達の仕事は、逃亡者や犯罪者の拿捕と投獄。このままだと君も巻き込まれるよ、それで迎えに来たんだ。」
それを聞いたドラクールはリサに向き直ると、強く言った。
「だから言っただろ、此処に居るのは危険なんだって!」
「まあ、待て。そう怒鳴るな、青年。少し落ち着け。」
ロザーナは穏やかにドラクールを窘める。
「ところで、貴方はリサ殿の知り合いか?」
彼女はリサの隣に屈むと、その右腕の血液を拭った。
「そうだ。俺はアルカード。摩天城が安全ではなくなったと、リサに伝えに来たんだ。」
「ねえ。君はそもそも、どうしてそんなにガイ・マーベリックの子供達に拘らっているの?三人をここまで連れて来たのも、君なんでしょう?」
そう訪ねるリュユージュに対して、ドラクールは無言で俯いた。
「理由次第では破棄してあげてもいいよ。これ。」
リュユージュが取り出して示したのは、以前ベネディクトが発行したリサ達に対する勾引状だった。
「有り難い話しだが、残念ながら理由なんかねェんだよ。」
何度目か。ドラクールは髪を掻き上げると、自身より身長の低いリュユージュを眼下に見た。
「ただ、助けたい。それだけだ。理由は、ない。」
リュユージュは勾引状を広げて提示すると、勢い良く真っ二つに破った。
「な…、」
言葉に詰まるドラクールを前に、リュユージュは更にそれを四つにした。びりびりと紙が破かれる音が響く。
「僕、君と同じ事を言った人を知ってる。」
ただの紙片と化した勾引状は、リュユージュの手から零れ落ちて行った。
「『理由がない』っていうのは、立派な理由だよ。」
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