ドラクールは胸を押さえて呼吸を整えると、ゆっくりと体を起こした。
「なあ。それなら、こういうのはどうだ?」
その言葉に、リュユージュは訝しそうに首を傾げる。
「俺はお前の言う事を聞く。だからお前も一つ、俺の言う事を聞け。」
「君、馬鹿なの?どうして僕が諾否を求められなくちゃならないんだ。」
「馬鹿はお前だよ。」
ドラクールは脂下がった表情で八重歯を見せて笑むと、強い口調で言った。
「いいか、こいつらに手を出してみろ。そしたら俺は死んでも帰らない。死んでも、な。」
「君、僕と同等のつもり?」
リュユージュは左手に隠し持っていた懐剣を投擲した。
それは腰を抜かして壁にもたれ掛かっているリサの右腕を掠め、ぱっくりと切り裂かれた其処からは鮮血が滴り落ちた。
「止せ!!お前の目的は、俺を連れ帰る事だろ!?」
「君と僕の、決定的な差を教えてあげようか。」
リュユージュはゆらりとドラクールに一歩近付く。
「僕は、命を賭していない。」
ドラクールはリュユージュのその言葉を、一笑に付する。
「下らねェ事を言うガキだな。いいからお前、さっさとこっちの条件を呑めよ。」
「言ったでしょう、君と僕は対等じゃない。僕が君に従う必要などないよ。」
そう言うとリュユージュは剣を握る右手に力を込め、リサの方に向き直った。
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