リュユージュが少女より聞き出したのは、リサの居場所だった。

部屋の朽ちた窓枠には硝子ははめられておらず、カーテンの代わりに掛けられた布の隙間から明かりが漏れている。

彼は気配を殺して摺り足で近付くと、そっと室内を覗いた。



線条の視界に入って来たのは、袖を肩まで捲り上げているリサと思しき少女と、白刃だった。

彼女はそれを持ち上げて縦にすると、天井からぶら下がっている電球に照らした。

暫くじいっと見つめた後、すうっと刃を撫でる。

そして自分の髪の毛を一本抜くと、ふうっと吹き掛けた。

彼女は少し落胆した表情になり、俯いて体を前後に揺らし始めた。

━━刀工?あの年齢で?

リュユージュの思惑通り、リサは刀を研いでいた。

再び、彼女は髪の毛を吹き掛ける。

すると今度は斬れたようで、満足気に微笑んで頷いた。

次にリサは外してあったガードやグリップを手に取ると、刀剣を組み立て始めた。






「リサ、そんな事してる場合じゃない。」

リュユージュからはその声の持ち主の姿は見えず、彼は体を強張らせた。

「いいから早く逃げろって!此処はもう、安全じゃないんだ。」

記憶の中の声と現実に聞く声が、完全に一致した。

━━黒髪の男だ…!

リュユージュは跳ね上がった鼓動を落ち着けると、意識を集中した。



「そんな事言ったって、行く場所ないじゃん。」

リサは左の方に向かって話し掛けている。

目視は出来ないが、リュユージュはドラクールの凡その位置を予測した。






リュユージュは呼吸を止める。

そしてそのまま、窓枠を乗り越えるとドラクールを目指して一気に攻め寄った。

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