※神童♀
「あれっ、キャプテンどうされたんですか?」
天馬は神童を発見し、駆け寄った。
しかし一回り小柄な神童は、嫌そうな顔をした。
それに気付いた天馬は、同時に腹部で組まれたいじらしい両手にも気付く。
「あ……もしかして、今日からとか」
神童は真っ赤になって、俯いた。
目尻にはうっすらと雫が光る。
「言うな、ばかっ……」
右手をのばし、頬と瞳を拭われると、ぶわりと雨が降る。
神童は後ろを向いた。
「毎回、重いですもんね。保健室、行きました?」
「まだだ……今から、行こうと思って」
天馬は微笑んで、神童の臍の下を撫でた。
普段ならセクハラだと叫ぶところではあるが、何せんこれは心配しての行動である。
神童は黙って撫でられるしかなかった。
しかも、撫でられたところが熱を孕み、痛みが和らぐのである。
「送りますよ、保健室まで」
「ありがとう……」
肩を抱かれて、ゆっくりと歩き出した。
じくじくと痛む腹部と、ふわふわととろける右肩、そして左半身。
両方が絶妙なハーモニーとなって神童に襲い掛かる。
「キャプテンは、こういう日でも必ず部活には来ますよね。なんでですか?」
「……会えるから」
お前に、と言って、ふいと顔を背けた神童に、天馬はつい、口付けた。
(知ってますか、キャプテン。あなたは女の子の日にキスを嫌がるけれど)
(すっごく嬉しそうにして、はにかんでいることを)
20110703
キスがいまいち目立たない
不機嫌のサイン