「豪炎寺」
不意に呼ばれた自分の名前。いや、名字。
呼んだのは我らがキャプテン、円堂だ。
「何だ、円堂」
円堂はオレの名を呼んで、オレが振り向くとにかりと笑う。不思議なやつだと思いながら、これはいつものことなので、気にしない。
「今日、病院寄るのか?」
病院といっても、オレは怪我もしてなければ、病気でもない。
妹の夕香がまだ眠っている、だからオレはお見舞いにいく。
「豪炎寺ってさ、ホント妹想いのいい兄ちゃんだよな!」
「円堂は放課後、どうするんだ?」
「んー、それがまだ決まってないんだよな。たぶん、帰って普通に過ごす」
「そうか」
自分にそのつもりはなかったのだが、円堂は笑ってる、とオレの顔を指差した。
無意識のことなので、自分では気がつかなかった。
「豪炎寺はさ、オレが呼んで振り返る時、絶対笑うんだよな」
「そうなのか?」
「うん、だいたいだけど。それで笑わない日は何かある」
そこまで指摘されると恥ずかしくなった。
円堂はオレのことをよく見てるなと思ってしまい、更に。
「まあ、思わず笑顔になるくらい、好きなんだよな!」
オレは控えめに、ああ、とだけ返した。
20110110
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