思えば、不思議なことである。
今更ながら、ではあるが。



「マーク、膝枕してくれないか?」


始まりはこれだ。
一応オレは炊事も得意で、勝手知ったるカズヤの家とばかりに昼食を作った。
いつものように美味しい美味しいと食べてくれたが、今回は自分でも作りすぎたと反省はしていたが、カズヤはオレが作ると必ず残さずに食べてくれる。
それは今回も例に漏れることなく。食べてすぐ、ソファーに伸びていた。
それを笑って見守るオレと、幸せそうな顔で目を閉じるカズヤ。


こんなにも素晴らしい人生を送れることができるなんて、オレは幸せだと思う。



「ん……マークの太股、やわらかいし……いい匂いだ」


太股を撫でて、鼻を鳴らす。恥ずかしい、顔に血液が集まって、火照る。
微睡むカズヤの髪を撫でていた手が止まり、カズヤがオレの腹から顔を離した。


「マーク、大好きだよ」

不意討ちの愛の言葉に余計顔が熱くなるが、カズヤはそんなオレの頬を撫でた。
「マークは?」


カズヤの声がまた不明瞭になってきた。
長年の付き合いから、もうすぐ寝るな、と予想がついた。
普段は大人びていて、聞き分けがよくて、余裕綽々なカズヤはその分寝顔が幼い。


女の子が羨む長い睫毛を完全に伏せて、穏やかな寝息をたてるカズヤの頬に口付け、すぐに屈めた体をもとに戻した。
いつも腕枕してもらっているから、たまにはこうして膝枕でもして、お返しをしたい。
ささやかではあるが、愛されるだけを求める女の子とは違う。



昼夜愛されているだけじゃ足りない。
こちらからも愛したいんだ。
カズヤ、欲深いオレを許してくれ。
カズヤに愛されるだけじゃ嫌なんだ。


「愛してる、カズヤ」



「うん、オレも愛してるよ、マーク」




起きていたのかと思ったが、どうやら違ったようだ。
……心臓に悪いな、まったく。カズヤが好きになってから、幾度胸踊らせたのだろうか。


カズヤが笑顔になった。
夢で、なにかいいことでもあったんだろうか。


「カズヤ……」



オレは男でカズヤも男。
でも本気なんだ。

好きで好きで、たまらないくらい。
カズヤのことを愛してるということが不思議で……それでも、




瞼を開けたら君がいる

(カズヤがいると)
(それだけでどうでもよくなる)



20110109
Mark's blindlyさまに提出
瞼を開けたら君がいる

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