静かな時間が流れる。
普段ならばこれほど心地のよい時間もないが、この状況においてはそうでもなかった。
佐久間が、いるのだ。
久し振りの休日に、ゆっくりと本を開き、紅茶を飲む。それがオレのおきまりの展開だった。だが今日は恋人でもある佐久間が来たいと言ったので、オレの部屋でふたりして並んで座る。間は50センチくらい空けて座ったのだが、どうにも本に集中できなかった。
隣で佐久間は一心不乱に書を読む。内容は……ドイツ語。普段の調子からは想像もつかないだろうが、佐久間は帝国の参謀だ。その頭脳はサッカーだけでなく勉学でもいかんなく発揮される。だから英語は勿論、ドイツ語やスペイン語が読み書きできると言っていた。
右目には眼帯をつけている佐久間だが、片目で書に集中できるのだろうか。オレが試してみると、どうもダメだった。慣れ、なんだろうか。文字の羅列を追う佐久間の橙色の瞳を見た。一見睫毛も長く、ぱっちりとした目の美少女だが、その性格はさながら男らしい。……オレに対する態度は気のせいにしてくれ。
「……鬼道さん、どうかしましたか?」
言われてずっと佐久間の顔を見ていたことに気付いた。手元の本はもう閉じられていた、オレのも、佐久間のも。
佐久間の読んでいた本には栞が挟まれていたが、オレのに挟んであるはずもなく。まあ、どうせ佐久間が来てから、内容は頭に入ってなかったしな。
「佐久間に、見惚れていた」
そう言うと佐久間は浅黒い頬を紅潮させた。
「鬼道さん、それ反則ですって……」
膝の上に乗せられていた大きな本を横に退かせ、オレの本をそれに重ねて佐久間はオレの体に覆い被さった。
もしかしてオレは、これを望んでいたのかもしれない。
2010.11.10
佐久鬼。やばい、佐久間とか鬼道さんとか楽しすぎる!
このふたりは百合百合しくてもうまいんじゃないかなあ
ふたりのふしぎ