「はい、あーん」


オレこと佐久間次郎は酷く困っている。



……というのも、目の前の美少女、否美少年風丸一郎太がパフェをすくった柄の長いスプーンをオレに向け、開口を求めているからだ。


まわりの何も知らない奴は呑気に「美少女に食べさせてもらって羨ましい奴め」とでも思っているのだろうが、風丸は生憎少女ではない。確かにかわいい顔してるとは思うけど、性格は至って男前な美少年なのである。


「いや……自分で食べられるし」
「いいから。あーん」



いや、よくねえし。


「鬼道にいうぞ」
「……食えばいいんだろ、食えば」



流石に鬼道さんに話されるのはまずい。
鬼道さんは今、ようやく影山から解放され、しかしその影山は逮捕され、送検中の護送車で事故を起こし、この世を去った。オレのサッカーも影山に教えられたものだ。だからこそ、影山の死は悲しかった。でも、サッカーの全てが、考え方の全てが影山に仕込まれた鬼道さんは? ……オレ以上に悔しく、悲しく、遣る瀬無かっただろう。その鬼道さんに、こんな個人的なことでまで迷惑をかけるわけにはいかない。


差し出されたスプーンの上のアイスをひとくち。ベリーソースのかかったバニラが口の中でほどけ、甘さが広がる。



「佐久間も甘いもの、好きだよな」




風丸は、いつもいつも、こうしてオレに無理矢理パフェとかを食わせ、そしてこうふわりと微笑むんだ。確かに甘いものは大好きだ。でも、オレはこの顔のせいで、よく電車とかで痴漢に遭う。全く失礼な話だ。それで、せめて味の好みだけでも男らしくしようと、甘いものを控えている。ダイエットじゃないぞ、だってサッカーで充分に消費できるし。


でも。



「オレがこうやって食ってやるのは、おま……お前の笑顔が見たいからとか、そういうんじゃないんだからな!」
「ああ、わかってる。あーん」





特大パフェを挟んでラブラブするふたりのおはなし。





2010.11.02
佐久風の日だろ! と滾って。
ふたりは甘いもの好きだと可愛い。どっちかといえば百合っぽい佐久風が俺様ジャスティス。佐久間がツンデレになった。
Sweet Day....

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