オレはいつも、ディランと並べられていた。
別にそのことに不満はなかったが、たまにはひとりで一人前として扱ってほしかったのだ。子供っぽい我儘だってわかってる。けど、一度だけでいいから。
「おはよう、マーク」
「……ああ、おはよう」
朝一番に逢ったのはカズヤだった。鋭いカズヤはすぐにオレが考え事をしているのがわかったみたいだったけど、言いふらしたりとかはしなかった。
「オレでよかったら相談乗るけど」
「大丈夫だ、心配には及ばない」
カズヤはオレと同じくMFだが、世界的に有名だ。甦ったフィールドの魔術師。天才MF。通り名はいくつもあって、その名に恥じない実力もある。才能があって、陰ながらに血の滲むような努力もあって。だから、オレはそんなカズヤが大好きだった。心配させて悪いとは思っている。
「ヘイ、マーク! 今朝のユーは元気がないね、どうしたんだい?」
悩みの元凶であり、かといって本人にはなんの関係もないディランがいつもどおりのテンションでオレを訪れた。どうもしていないとだけ答えて、顔を洗いに行く。顔を洗ってすっきりしたならば、頭もすっきりするだろうと思ったからだ。
サッカーをしても昇華されなかったもやもやは洗顔などで消えるはずもなく、オレはただ、自らの腕を枕に、机に突っ伏した。
今までは、全く気にならなかったことなのに。
何で、今更。何で、今朝。何で、こんな時に。
オレ達のFFIは着々と近付いている。北米予選は勝ち抜いたから、後は本戦を待つだけだが、今のオレにはそれすらもできそうもない。
「おい、大丈夫か、マーク」
ドモンにも心配をかけて、オレはドモンに訳を話した。オレとディランはふたりで一人前だという夢を見たと。
「なるほどな。そりゃあ確かに一之瀬もマーク達はいつも一緒だって言ってたし、他からの目線はそうなのかもな。けど、ディランはマークをひとりで一人前って思ってるぞ」
きっとな、と付け加えられたが、ドモンの言葉に救われたような気がした。ドモンに礼を言ってディランを探しに走る。
なあ、オレ達はふたりで一人前なんですか。
「なあ、ディラン!」
「ど、どうしたんだい今日のマークは……。ミーにはよくわからないね」
「オレ達はふたりで一人前なのか」
ディランはぽかんとした表情を数秒見せたあと、急に笑い出した。
「違うよ、ユーとミーはふたりが一緒にいるからユーもミーもひとりで一人前でいられるんだよ」
2010.10.09
今日はディラマクの日でもあるだろ的な。マークたん受けはあはあ。
イケメンなマークが不安がって、おかんみたいなところを見せたりするのが好きだと最近気付いた管理人。
ふたりで一人前っていうよりは、ふたりで二人前、みたいなイメージ。
ふたつでひとつ、ひとつはふたつ