初めてあいつを見た時に、オレは。
初めてあいつを見た時に、オレは。
その脚力に惹かれた。
その力強さに惹かれた。
日本、雷門中。
つい最近までは最弱サッカー部のある学校と噂されていた、私立中。
だがそれはもう、過去形であり、現在フットボールフロンティアにて優勝を争っているほどの実力ある学校になった。
それこそ、雷門中サッカー部のキャプテンである円堂が心強い部員を集めたというのもあるが、部員各々の努力もあったことだろう。
「染岡、何を考えている」
「あ? ……ああ、悪い、何でもないぜ」
ことに、得点力に関わる10番を着た、逆立った髪の男と11番を着た、ピンクの頭の男。このふたりは部の期待を背負い、蹴り続けていた。
「練習中に考え事はするな。危険だ」
逆立った髪の男こと豪炎寺修也は、真剣にサッカーをしない奴が嫌いである。それだけ真面目に真剣にサッカーに向き合っているということであり、彼の良い点であった。そのことは勿論ツートップとして並ぶ染岡と呼ばれたピンク頭の男も知っているわけで。だが、周囲には内密ながらもふたりは恋仲。恋人に心配されている、と顔や心が緩んでも仕方ない、と染岡は頬を緩めた。
「ん? 染岡、どうしたんだ。さっきからニヤニヤしてるけど。もう休憩だぞ」
染岡は円堂に指摘され、初めて気がついた。ニヤニヤしていることにも、既に休憩だということにも。
「豪炎寺、この後ドラゴントルネードの練習をしねえか」
「今日は夕香のお見舞いに行く日だから無理だ」
妹を大切にしている豪炎寺に、染岡はやっぱりかと諦めかけたが、続く豪炎寺の言葉に似合わないながらも小躍りしたい気持ちになったのである。
「だが、夕香のお見舞いは練習をしてからでもできる、だろう……多分」
きっと、小躍りを始めそうな染岡の耳には、多分という単語が届いていなかったのである。
2010.11.10
染豪の日でもあるだろと思って。
実はタイトルはツンデレと続きます。豪炎寺がソフトなツンデレのつもりだった。
うっすらと